亀戸天神社は、東京都江東区亀戸に鎮座しています。
菅原道真公をお祀りしており、下町の天神さまとして多くの人々に親しまれています。
昔は九州の太宰府天満宮に対して「東宰府天満宮」や「亀戸宰府天満宮」と呼ばれていましたが、明治6年に東京府社となり、亀戸神社と名乗るようになりました。そして昭和11年には現在の亀戸天神社という正式名称に改められました。
この記事では、亀戸天神社の由緒・歴史、ご利益、見どころなどを詳しく紹介しています。ぜひ、楽しみながらお読みください。
亀戸天神社は「東京十社」の一つに数えられており「東京十社めぐり」についても紹介中です。
御祭神(菅原道真公)
ご祭神は、天満大神(菅原道真公/スガワラミチザネ)と天菩日命(菅原家の祖神)です。
道真公は、幼少の頃から学問に秀で、その才能を早くから開花させ、学問と政治において大活躍し、現在でも学問の神様として広く信仰を集めている方です。
菅原道真公の生涯と天神信仰については以下の記事でも詳しく解説しています。
由緒・ご縁起
創建は道真公の子孫、菅原大鳥居信祐
正保三年(1646年)、九州の太宰府天満宮の神官であった菅原大鳥居信祐公(道真公の子孫で、亀戸天神社の初代別当)は、神のお告げを受けて、道真公にゆかりのある飛び梅の枝を使って天神像を彫刻しました。
天神信仰を広めるために社殿を建てることを志し、日光や盛岡などの各地を巡り、最終的に江戸の本所亀戸村にたどり着きました。そこで、元々あった小さな天神のほこらに神像をお祀りしたことが亀戸天神社の始まりとされています。
名暦の大火(明暦3年/1657年1月18日から20日)が発生した後、徳川四代将軍徳川家綱が江戸の復興開発を進められ、亀戸天神社があった本所の町もその一環として整備されることになりました。天神様を深く信仰していた将軍家綱公は、現在の社地を寄進し、鎮守の神としてお祀りするように指示し、亀戸天神社の形成と発展に尽力されました。
その後、寛文二年(1662年)10月25日に太宰府の社に倣って社殿や回廊、心字池、太鼓橋などが整備され、以来約350年にわたり東国天満宮の宗社として崇敬され続けています。
亀戸天神社の見どころ
名所、藤棚は170年前と変わらない
上の浮世絵は、歌川広重の代表作の一つ「名所江戸百景」の亀戸天神社の藤の花を描いた「亀戸天神境内」(1856年作)です。この作品はフランスの画家クロード・モネに影響を与えたとされている名作中の名作です。
そして、下の写真が現在の「太鼓橋(男橋)」が見える景色です。
浮世絵と写真を見比べてみると、左側に藤棚があり、中央に太鼓橋(男橋)がある光景は同じと言っていいでしょう。
つまり、浮世絵が描かれたのは今から約170年前ですが、今、藤の季節に亀戸天神社を訪れれば、まったく同じ光景に接することができるのです。
亀戸天神社を参拝に行く際は、ぜひ、この歌川広重の浮世絵と実物を見比べてみてください、きっと感動されると思います。。
藤の花の背景にはスカイツリーが映える
亀戸天神社の藤棚は上の画像にも収まりきらないほど広く、「藤まつり」は4月下旬から5月上旬まで開催されます。
御祭神である菅原道真公との関係では、むしろ梅の方が密接であり、亀戸天神社でも、境内には300本以上の梅の木があり、毎年2月には梅まつりが開催され、多くの見物客で賑わいを見せます。
ただ、藤棚があまりにも見事なため、近年では藤まつりの方が名高く、人気が高いという評価が定着しているようです。
その理由として、2012年に完成した東京スカイツリーの存在が大きくかかわっています。
亀戸天神社からスカイツリーまでは直線で1.5kmであり、藤まつりの頃の夜間は亀戸天神社もスカイツリーもライトアップされます。
スカイツリーは刻々と色を変化させるので、スカイツリーが紫色にライトアップされる時、それがあたかも亀戸天神社の藤の花の紫がスカイツリーを染め上げているかのように見える美しい光景が目を楽しませてくれます。その光景は撮影スポットとして人気が高まっています。
東京十社の中で、スカイツリーに最も近いのが亀戸天神社であり、もし歌川広重が現代に生まれ変わったら、きっとスカイツリーをバックに藤棚を描くに違いはないと思います。
御祭神、菅原道真公の銅像
亀戸天神社にある菅原道真公の銅像は「五歳菅公像(ごさいかんこうぞう)」と呼ばれているもので、ご五歳児であった道真公を表現したものです。
道真公が生まれた菅原家は代々学問の家であり、道真公は、5歳で初めて和歌を詠み、幼少期から「神童」と称されるほど学問で優れた才能を示した方です。
学問のみならず政治家としての才能にもたけていたため、宇田天皇や醍醐天皇に重用され、右大臣まで上り詰め、後に従二位に叙された方です。
菅原道真公の生涯と天神信仰については以下の記事でも詳しく解説しています。
太鼓橋 男橋
大鳥居をくぐってすぐの所に「太鼓橋 男橋」があり、橋の手前からでも拝殿が見えます。
亀戸天神社にはこの太鼓橋 男橋を含め3つの橋がありますが、いずれも九州太宰府天満宮の境内に習って造られたものです。
境内の心字池に架かる三つの橋は、仏教の「三世(過去・現在・未来)」を表しており、この男橋は、今まで生きてきた過去を表しています。
橋を渡ることで心身を清めながら、御神前に進んでいくことができます。
平橋(へいばし)
この平橋は女橋の少し手前にあります。平橋は今が見える現在を表しています。
太鼓橋 女橋
女橋は拝殿の手前にある橋であり、希望の未来を表しています。
私は亀戸天神社をお参りする際は、その時々の願い事を拝殿に向かう手前の女橋の上で考えてから参拝するようにしています。
弁天社
太宰府天満宮の心字池の近くには「志賀社」という神社があります。この神社は海や広い水域を守る神様で、亀戸天神社へは寛文5年7月にお祀りされました。
亀戸天神社の藤や太鼓橋、心字池などが江戸時代の新しい名所として知られるようになり、心字池のほとりにあるこの神社は、当時の文人たちによって上野の不忍池に見立てられ、「弁天堂」や「弁財天同」と呼ばれたことから「弁天社」と名付けられました。
弁天様は七福神の一柱で、芸道や富の進行を象徴し、福徳や知恵、芸能の成就を願う神様として信仰されています。現在では、8月の例大祭に宮元会の会員が集まり、祭典が行われています。
本殿・拝殿
天満大神として知られる菅原道真と天菩日命を祀っています。
元の本殿は1945年(昭和20年)の空襲で焼失しました。戦後は前田家の江戸屋敷にあった社を譲り受けて使用していましたが、現在の建物は1979年(昭和54年)に再建されたものでです。
鷽の碑
「鷽の碑」は、毎年1月24日・25日に行われる鷽替え神事において、重要な役割を担っています。
鷽替え神事は、木彫りの鳥「鷽(うそ)」を新しいものに交換することで、過去の悪い出来事を「嘘」に変え、新しい一年を良い年にするという願いを込めた神事です。
毎年、鷽替え神事の日には「鷽の碑」の周りにたくさんの鷽が飾られます。参拝者は、この鷽を新しいものに交換することで、新しい年の始まりを祝います。
新牛(しんぎゅう)
本殿の左側には牛の像があります。
この像に触れることで、参拝者は病気を癒し、知恵を得るとされています。
菅原道真公と牛の関係は多岐にわたります。
まず、彼の誕生日は承和12年(845年)6月25日の乙丑であること。
また、牛の鳴き声によって刺客から逃れたり、白牛に助けられたりしたエピソードもあります。
さらに、道真公が「自分の亡骸を牛車で運ぶこと」と遺言したため、彼の遺体は牛車に乗せられ、四堂という場所に差し掛かると牛が動かなくなりました。
この地が後に太宰府天満宮の建立の起源とされ、牛年にあたることから、牛は天神様の神使として信仰され続けています。
御嶽神社
卯の神として知られ、御本殿の東側に位置しています。
菅原道眞公の学問の師を祀っており、特に1月の初卯、二の卯、三の卯の日には卯槌や卯の神札が配布されます。
また、暦の十二支の卯とも関連があります。
卯は午前6時頃を示し、邦楽では東を象徴し、さまざまな物事の始まりや広がりを意味します。
卯の日は年によって異なり、火災除けや雷除け、商売繁盛、開運の神様としても知られています。
花園神社
花園神社には、菅原道真公の奥様である宣来子(のぶきこ)と14人のお子様が祀られています。
宣来子は、道真公と同じ学問の道を歩んだ島田忠巨の娘で、幼い頃から親しい関係にあり、生涯を通じて共に学び続けました。
しかし、菅公が左遷された際には、妻子ともに各地に離れ離れになり、辛い道を歩むことになりました。
それでも、悲しみの中で妻として、母としての思いは変わらなかったといわれています。
毎年2回の花園社祭では赤い花を捧げてお御霊を慰めています。
安産や子宝、育児、立身出世の守護神として多くの人々に信仰されています。
紅梅殿
紅梅殿では、毎年2月25日に「紅梅殿例祭」を開催します。
毎年、大宰府から亀戸天神社に紅白の梅が奉納され、学校などの公共施設にも寄贈されています。
菅原道真公が太宰府に左遷される直前に京都の紅梅殿の庭で、愛していた梅の花を見て詠んだ以下の和歌が有名です。
「東風吹かば、におい起こせよ梅の花、主なしとて春な忘れそ」
東風が吹いたら、梅の花の香りを漂わせてくれ、主人がいなくても春を忘れないでほしい
という意味の和歌にちなんで、道真公を慕って太宰府まで飛んできたとされるのが「飛梅」で、紅梅殿はその実生を祀る神社です。
亀戸天神社のお祭り・イベント
梅まつり、300本以上の梅が咲き誇る
梅の本数:約300本
梅の主な種類:紅干島、紅筆、呉服枝垂、白加賀、おもいのまま、月影 など
入場料:無料
URL:亀戸天神社 梅まつり 公式ページ
菅原道真公が梅の花を愛でたことから、梅まつりは古くから続く伝統の行事となっています。
毎年2月上旬頃から梅の見ごろを迎え、約300本もの紅白の梅の花が美しく咲き誇り、多くの見物客で賑わいます。
見頃を迎えると、辺りは甘い香りに包まれます。
鳥居・男橋・平橋・女橋など境内の朱色と紅白の梅の見事なコラボーレーションを鑑賞できます。
藤まつり
4月中旬になると、境内にある50株以上の藤の花が一斉に咲き誇ります。
心字池に映るその美しい姿とほのかな香りは、多くの人々に愛され、「東京一の藤の名所」として賑わいを見せます。
夜になると、静寂の中で灯りに照らされた花房が心字池の穏やかな波に揺れ、まるで幽玄の世界に迷い込んだかのような美しさを醸し出します。
東京一と称される藤の美しさだけでなく、数多くの露店が並ぶ下町の情緒もぜひ体感してみてください。
藤まつりの夜景は必見でしょう。
境内のライトアップが映し出す藤色がスカイツリーを染めているかのような美しい光景を堪能できます。
菊まつり
境内には約500鉢の菊が展示されます。
大きな作品から小さな盆栽まで、さまざまな菊が並ぶ光景は、訪れた人々を感動させるほどです。
たとえば、上の画像のような太鼓橋をテーマにした菊の作品、「千輪咲」と呼ばれる、1本の茎から枝分かれして約1,000輪の花を咲かせるものや、1本の小菊を大きな株に育てて、崖から垂れ下がる野菊を表現した「懸崖」などが見られます。
2024年はスカイツリーを模した菊まつりタワーは展示されませんでした。
スカイツリーが建設中だった2009年以来、15年間展示が続いてきましたが….2025年の復活に期待したいものです。
例大祭・献燈明
亀戸天神社では、年間を通じて多彩な行事が行われますが、特に華やかに開催されるのが例大祭です。
例大祭では、神輿の渡御や神楽の演奏が行われ、地域の活気に満ちた雰囲気を楽しむことができます。
例大祭の夜の「献灯明」は、江戸の風情が漂う夏の夜、千本の灯りが夢のような空間を演出します。
神様に捧げられた1,000個以上の提灯が境内を照らし、幻想的な光景を演出します。
静かな夜空の下に広がるその光景は、まるで平安時代の絵巻物のような美しさを感じさせます。
主なお祭り・年間行事スケジュール
【1月】
歳旦祭:
年のはじめに、国の安泰と氏子の平安を祈願する祭事が執り行われます。
初卯祭:
境内に隣接する御嶽神社の初縁日です。
うそ替え神事:
過去の悪い出来事を「嘘」に変え、新しい一年を良い年にするという願いを込めた神事です。
【2月】
節分追儺祭:
魔を払い、福を招く伝統的な行事です。
菜種御供:
菅公の旧宅にあった菜種を供える神事です。
紅梅殿例祭:
菅公が梅の花を愛でたことから、梅の花を供えてお祀りします。
【3月】
神忌祭:
菅公の忌日を迎え、追悼の意を込めて祭事が行われます。
【春】
梅まつり:
境内に咲き誇る梅の花を鑑賞する、一年で最も賑わう行事の一つです。
【夏】
例大祭:
亀戸天神社最大の祭典。神輿渡御や献灯明など、様々な催しが行われます。
【秋】
菊まつり:
菅公が菊の花を愛でたことから、菊の花を飾り、お祀りします。
【その他】
初天神祭:
毎月25日に行われる、月次祭です。
亀戸天神社の御朱印やお守り
御朱印
上の御朱印は通常の御朱印です。
右上には「東宰府」の文字。東宰府は東の大宰府、東国における道真公信仰の中心地であることを示しています。
右下には「元准勅祭社」とあり、東京十社の元となった准勅祭社であったことを示しています。
期間限定御朱印
梅まつり、菊まつりなど、季節のイベントに合わせてデザインが変わる限定御朱印が人気です。
以下の例祭では限定御朱印が授与されます。
- 1月24、25日「うそ替え神事」
- 1月25日「初天神」
- 2月上旬~3月上旬には「梅まつり」
- 4月下旬~5月上旬「藤まつり」
- 8月下旬「例大祭」
- 10月下旬~11月下旬「菊まつり」
亀戸天神社のオリジナル御朱印帳
亀戸天神社のオリジナル御朱印帳は以下の4種類、初穂料は各1,200円です。
- 梅
- うそどり(鷽どり)
- 太鼓橋
- 藤の花
オリジナルではないですが、東京十社めぐり専用の御朱印帳も授与されます。
また、オリジナルの御朱印袋の3種類も扱っています。
御朱印・お守りをいただける場所と時間
授与所の営業時間:8:00~17:00
御朱印の授与は、拝殿の右側の社務所で行っています。
亀戸天神社のアクセス・最寄り駅
電話番号:03-3681–0010
アクセス:
(電車)JR総武線 徒歩約13分
(自動車)首都高速7号小松川線 錦糸町出口から約5分
亀戸天神社の駐車場
利用時間:午前8時~午後5時頃まで
収容台数:約30台
注意点:亀戸天神社は平時でも参拝者が多く、梅まつり、藤まつりなどの例祭日は非常に混み合うため、公共交通機関を利用するよう呼びかけられています。
亀戸天神社の紹介まとめ
いかがでしたでしょうか?
学問の神様として知られる菅原道真公を祀る亀戸天神社は、歴史と自然が調和した美しい場所です。
梅や藤の花が咲き誇る季節の光景は必見に値します_年間をとおして多くの例祭・行事が行われており、ぜひ一度、ご自身の目でその魅力を感じてみてください。
御朱印や御守も種類が豊富なので、参拝の記念として、お土産にもおすすめです。
都会の喧騒を離れ、静寂に包まれた亀戸天神社で、ゆっくりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
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