日本神話において「国造りの神」として知られる大国主神(おおくにぬしのかみ)。
縁結びの神様としても全国的に信仰されており、出雲大社をはじめ多くの神社で祀られています。
本記事では、大国主神の読み方や神格、ご利益、古事記・日本書紀に登場する神話エピソード、そして祀られている代表的な神社までをわかりやすく解説します。
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読み方と別名
正式表記:大国主神(おおくにぬしのかみ)
別名:大国主命(おおくにぬしのみこと)、大己貴神(おおなむちのかみ)、八千矛神(やちほこのかみ)、大物主神(おおものぬしのかみ)など
古事記では「大己貴神」、日本書紀では「大国主命」などと表記され、地域や神社によって呼び方が異なります。
大国主神は何の神様?ご利益とその背景
大国主神(おおくにぬしのかみ)は、日本の国土を築き、人々の暮らしを整えた「国造りの神」であり、
同時に「縁結び」「医療」「農業」「商業」「厄除け」など、生活のあらゆる面に関わる万能神として信仰されています。
その神徳は、古事記・日本書紀に描かれるエピソードと深く結びついています。
縁結び・夫婦和合
因幡の白兎の物語に象徴されるように、大国主神は「優しさ」と「真心」の神です。
八上比売に求婚する途中、皮を剥がれて泣いていた白兎に出会い、兄神たちが教えた誤った治療法ではなく、「真水で体を洗い、蒲の花粉をまぶす」という優しい方法で兎を癒します。
その姿に心を打たれた八上比売は、大国主神を夫として選びます。
この物語は、真心が縁を結ぶという教訓を含み、現代でも「良縁祈願」のご利益として広く信仰されています。
厄除け・病気平癒
黄泉の国に住む祖神・須佐之男命のもとを訪れた大国主神は、蛇やムカデの室に閉じ込められるなど、命がけの試練を受けます。しかし、須佐之男命の娘・須勢理毘売命の助けもあり、すべてを乗り越え、結婚を果たします。
この試練を乗り越えた神話は、災厄を退け、命を守る力として信仰され、病気平癒や厄除けのご利益につながっています。
五穀豊穣・農業・商売繁盛
少彦名命(スクナヒコナ)とともに全国を巡り、農業・医療・温泉・まじないなどを広めた大国主神。
人々の暮らしを整え、土地に命を吹き込む「国造り」の神としての姿がここにあります。
この活動は、現代においても五穀豊穣・商売繁盛・地域繁栄のご利益として受け継がれています。
国家安泰・土地守護
高天原からの使者である建御雷神と経津主神に国を譲るよう求められた大国主神は、最終的に国譲りを受け入れ、現世から退き、幽世(かくりよ)の主として国を見守る存在となります。
この譲渡は、天孫降臨の前提となる重要な神話であり、
国家安泰・土地守護・目に見えない力の守護神としての信仰につながっています。
大国主神、何をした神様?
大国主神は何をしたのか人なのか、古事記と日本書記の両方に記述されている有名なエピソードを紹介します。
因幡の白兎=優しさが縁を結ぶ

因幡の白兎は優しさから縁結びの象徴
旅の途中、兄たちとともに八上比売(やがみひめ)に求婚しようと因幡の地を訪れた大国主神。
その道すがら、皮を剥がれた白兎が泣きながら横たわっていた。兄神たちは面白半分に「海水に浸かって風に当たれ」と嘘を教え、兎はさらに苦しむ。
最後に通りかかった大国主神は、兎の痛みに心を寄せ、こう語る。
「真水で体を洗い、蒲の穂の花粉をまぶしなさい」
兎はたちまち癒え、その優しさに感動した八上比売は、大国主神を夫として選ぶ。
この物語は、真心が縁を結ぶという神徳の原点。
現代でも「縁結びの神様」として深く信仰される理由が、ここにあります。
須佐之男命の試練=命をかけた愛と成長
大国主神は、黄泉の国に住む祖神・須佐之男命(すさのおのみこと)のもとを訪れる。
そこで待っていたのは、蛇の室、ムカデの寝床、火の試練といった命がけの試練の数々。
須佐之男命は、娘・須勢理毘売命(すせりびめ)との結婚を望む大国主神を試したのだ。
恐怖に震えながらも、知恵と勇気、そして須勢理毘売命の助けによって、すべてを乗り越える。
やがて須佐之男命は彼を認め、神宝とともに娘を託す。
この物語は、試練を乗り越える力と、愛の成就を象徴し、
厄除けや病気平癒、夫婦和合のご利益と深く結びついています。
国造りとスクナヒコナ=人々の暮らしを整える旅
試練を経て成長した大国主神は、小さな神・少彦名命(すくなひこなのみこと)と出会う。
二柱は力を合わせ、全国を巡りながら、農業の知恵を授け、病を癒す術を教え、温泉を湧かせ、まじないを広めていく。
人々の暮らしは豊かになり、土地は整い、国は形を成していく。
この偉業こそが「国造り」と呼ばれ、大国主神は生活の守護神・繁栄の神として崇敬されるようになる。
国譲りと幽世の主=譲る強さ、見守る神へ
やがて、高天原から天孫降臨の命が下り、国を譲るようにと使者が訪れる。
大国主神は葛藤の末、息子・事代主神の意見を聞き、国を譲ることを決意する。
「この国は、天の御子にお任せしよう」
そう語った大国主神は、現世から退き、幽世(かくりよ)の主として国を見守る存在となる。
この譲渡は、譲る強さと調和の精神を象徴し、国家安泰・土地守護の神としての信仰へとつながっていきます。
大国主神を祀る代表的な神社
- 出雲大社(島根県出雲市)
大国主神の総本社。縁結びの聖地として全国的に有名。神在祭では全国の神々が集まる。 - 大神神社(奈良県桜井市)
三輪山をご神体とする古社。大物主神=大国主神とされ、国家安泰・病気平癒の信仰が厚い。 - 美保神社(島根県松江市)
大国主神の子・事代主神を祀る。出雲大社との両参りで商売繁盛・漁業守護のご利益。 - 伊和神社(兵庫県宍粟市)
播磨国一宮。大己貴神として祀られ、国土守護・五穀豊穣の神として崇敬される。 - 大国魂神社(東京都府中市)
武蔵国の総社。大国主神の別名「大国魂神」を祀り、地域守護・厄除けの信仰が根強い。
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大国主神のまとめ
大国主神は、優しさと真心の象徴で、国造りと縁結びの神、そして幽世の主です。
日本の国土を築き、人々の暮らしを整えた「国造りの神」であり、その優しさと知恵から「縁結びの神」としても深く信仰されています。
古事記・日本書紀に描かれる数々の試練と功績は、現代の私たちにも勇気と癒しを与えてくださる神様として大国主神を祀る神社への参拝は人気があります。