谷保天満宮(やほてんまんぐう)は、東京都国立市谷保に位置する神社です。
谷保天満宮は東日本最古の天満宮であり、「関東三大天神」の一つに数えられており、菅原道真公と菅原道武公がご祭神として祀られいます。
谷保天満宮の由緒・歴史など
谷保天満宮は、東日本最古の天満宮であり、湯島天神・亀戸天神とともに関東三大天神の一つに数えられています。
社伝によると、901年に菅原道真が大宰府に左遷された時、道真の三男の道武が現在の谷保天満宮の付近に配流(はいる=島流し)され、父道真の死を知った道武は父の像を自ら彫って祀ったとされ、それが谷保天満宮の起源とされています。
その後、道武の子孫で源頼朝の家臣の津戸三郎為守(つのとのさぶろうためもり)が社を現在地に移して社殿を整備しました。為守は法然の主要な弟子の一人でもありました。
菅原道真公の詳細と道真公を祀る天満宮・天神については以下の記事をお読みください。
御祭神
御祭神の菅原道真公を筆頭に他の配祀神(はいししん)も祀られています。
- 御祭神:菅原道真公
- 配祀神:菅原道武公
- 配祀神:石土毘古神(いわつちびこのかみ)
天日鷲神(あめのひわしのかみ)
倉稲魂命(うかのみたまのみこと)
配祀神とは、御祭神と縁故が深い神、配偶のお后神、御子神、随神などが祀られます。
菅原道武公は子息なので御子神です。
石土毘古神は、古事記に登場する伊邪那岐命と伊邪那美命が国生みと神生みを行った際に生まれた岩屋土の男神として知られています。
ご利益(御神徳)
菅原道真公は学芸・文芸の神として広く信仰されており、特に学業成就・合格祈願・必勝祈願に強いご利益があるとされています。
石土毘古神、天日鷲神、倉稲魂命も祀られているので商売繁盛や五穀豊穣などのさまざまなご利益があるとされています。
- 学業成就・合格祈願・必勝祈願
- 交通安全
- 無病息災・病気平癒・家内安全
- 五穀豊穣・商売繁盛
- 大漁・豊漁
- 厄除開運、諸願成就
- 開拓・殖産
- 良縁祈願・縁結び・子宝・子受け など
谷保天満宮の見どころ
一の鳥居から拝殿・本殿まで歩いた
表参道の最初に立つ一の鳥居から進んでみました。
一の鳥居と狛犬
谷保天満宮の鳥居は、笠木(鳥居の一番上の部分)の端が斜めになっているので「八幡鳥居」というタイプです。
右側の狛犬は口が開いている「阿形狛犬(あぎょうこまいぬ)」という種類で、たてがみもあるので「唐獅子型」です。
左側の狛犬は口が閉じている「吽形狛犬(うんぎょうこまいぬ)」という種類で、こちらもたてがみがあるので「唐獅子型」です。
二の鳥居手前の狛犬
さらに進んでいくと別の狛犬が待ち構えています。
こちらの2匹の口には朱色は塗られていません。先の2匹と同じで阿形と吽形の唐獅子型です。
二の鳥居と手水舎
二の鳥居も「八幡鳥居」という種類のものです。二の鳥居のすぐ先に手水舎(てみずや)があります。
谷保天満宮の手水舎の吐水口(とすいこう)も龍です。龍は水の守り神とされており神社の吐水口の多くは龍となっています。
下り宮の階段
石段を下って境内に入っていくという「下り宮」となっています、天満宮としては珍しい構造です。
神楽殿
下り宮の階段を下りきると左側に神楽殿があります。祭事の際にお囃子が演じられますが普段は雨戸が閉じられています。
座牛
この座牛は、道真公の亡くなった悲しみに動かなくなった牛を表現したものです。
菅原道真公が亡くなり、葬ろうとして牛車で墓に向かう途中、牛車を引いていた牛が座り込んでしまったのでその場に亡骸を埋葬したという伝説があります。
社務所
社務所には、左から宝物殿入口、社務所、ご祈祷受付があります。
2階の宝物殿には重要文化財の「木造獅子狛犬」と木造扁額(へんがく)額文「天満宮」が展示されています。
御祈祷所では、厄除け、交通安全などのご祈祷・御祈願を受け付けています。午前10時~16時までに予約なしで随時受け付けています。交通安全祈願については車祓所(くるまばらいしょ)があります。
神使の撫牛
撫牛はご祭神菅原道真公のお使い(神使)の牛です。
病気平癒のご利益があり、体の具合の悪い箇所を撫でると病気が治るといわれています。また、道真公は学業の神様であるため頭部を擦ると知恵を授かるご利益があるとされています。
拝殿と本殿
拝殿は入り母屋造りで正面の向拝(こうはい)は軒唐破風付入り母屋造りです。向拝とは正面階段側に張り出した屋根・庇(ひさし)の部分のことです。
拝殿(右)と本殿(左)の間には幣殿(へいでん)という別棟があります。
右側の拝殿と左側の本殿の中間に幣殿(へいでん)の入り口があります。拝殿~幣殿~本殿までが連なっているので「権現造り」のようです。
本殿は寛延2年(1749年)に建てられたもので、切妻造りの屋根が長い曲線で庇まで伸びている「三間社流造(さんけんじゃながれづくり)です。現在、屋根の下の部分は退色が進んでしまっていますが、かつては艶やかな極彩色(ごくさいしき)が施されていました。
谷保天満宮の「梅林」
谷保天満宮は梅の名所であり、約350本の梅林があります。
毎年2月上旬~3月にかけて紅梅・白梅が咲き誇ります。毎年2月下旬~3月上旬頃に「梅まつり」が開催されています(梅まつりの詳細はこちら)。
東風(こち)吹かば にほひをこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春な忘るな(春な忘れそ)
この歌は、菅原道真公が大宰府に左遷されるとき京都の邸宅に植えてあった「紅梅殿」という梅の木との別れを惜しんで詠んだものです。
「家の主である私が大宰府に行ってしまっても、春を忘れずに花を咲かせ、都から吹く東風にのせて梅の匂いを大宰府まで届けてくれ」
という意味であり、紅梅殿との別れの寂しさ、左遷される無念さをうまく表現した名作です。
この歌を詠んだのち、大宰府へ去った道真公を慕って紅梅殿が一夜のうちに空を飛んで行ったという「飛梅伝説(とびうめでんせつ)」があります。道真公と紅梅殿が相思相愛であったことから、谷保天満宮などの多くの天満宮や天神社では梅を植えるようになった、といわれています。
手水舎の裏手の坂を下ると梅林が広がっています。
梅林にある「茶処 てんてん」では、おいしい甘酒・白玉しるこ・お抹茶セット・お茶セットなどの軽飲食を楽しめます(茶処 てんてんさんのブログはこちら)。
交通安全祈願発祥の地
谷保天満宮は交通安全祈願発祥の地です。
明治41年(1908年)8月1日に「自動車の宮様」と称された有栖川宮威仁親王殿下(ありすがわのみや たけひとしんのう)の自動車乗用御奨励のお志しに基づき企画された、わが国初の「遠乗会(ドライブツアー、とおのりかい)」の目的地が谷保天満宮でした。
その際、谷保天満宮の梅林で催された食事会の席上でわが国初の自働車倶楽部(オートモビル・クラブ・ジャパン)が設立され「日本の自動車の将来について」語り合われました。
宮様一行は、谷保天満宮の拝殿に昇殿参拝されたのち、整備も不十分な道を故障や事故もなく無事に帰途に就かれました。このことから谷保天満宮が交通安全祈願発祥の地となりました。
写真(上)右側が「有栖川宮威仁親王殿下台臨記念碑」です。写真(下)は梅林での食事会、右端が有栖川宮威仁親王です。
境内社
三社合殿(稲荷合殿)
表参道の途中の狛犬を通り過ぎた右側に鎮座しています。
合殿(あいどの)とは神社内で同じ社伝の中に二柱以上の神を合祀することです。谷保天満宮の三社合殿には以下が合祀されています。
- 稲荷神社(稲荷社)
- 蒼守稲荷神社(蒼守社)
- 淡島神社(淡島社)
朱色の鳥居をくぐり進むと三社合殿にたどり着きます。
五社合殿
五社合殿は本殿の裏手に鎮座しています。
谷保天満宮の五社合殿には5柱(5つの神様)が祀られています、( )内は御祭神。
- 天照皇大神宮(天照大神)
- 熊野神社(伊邪那岐命、伊邪那美命)
- 日吉神社(大山杭命)
- 妙義神社(日本武尊)
- 稲荷神社(宇迦之御魂大神
弁天社(厳島社)
弁天社(厳島社)は梅林の左方向に位置しています。
御祭神は弁財天である市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)です。財運上昇、芸事の上達、学業向上などのご利益を授けてくれるとされています。
厳島神社
谷保天満宮の厳島神社の御祭神は上記の弁天社と同じ市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)であり、弁財天と同様、財運上昇、芸事の上達、学業向上などのご利益があるとされています。
鳥居の先に橋が架かっており、厳島神社は「弁天池」の真ん中にあり湧水に囲まれています。
弁天池のそばには東京都名水100選の一つである「常盤の清水」と呼ばれる泉があります。
第六天神社
駐車場の東側に第六天神社はあります。
第六天神社は、日本神話の神である面足命(おもだるのみこと)と惶根命(かしこねのみこと)を祀る神社です。
保谷天満宮のお祭り・イベント
谷保天満宮のお祭りなどの年中行事は以下の通りです。
年中行事 | |
時期 | お祭り・神事など |
1月1日 | 歳旦祭 |
1月25日 | 初天神・筆供養 |
2月3日 | 節分追儺祭(せつぶんついなさい) |
4月 | 勧学祭 |
6月30日 | 大祓式 |
8月25日 | 風祭(夏祭り) |
9月15日 | 獅子迎え |
9月25日 | 例祭日 |
9月25日に近い土日 | 万灯行列、古式獅子舞 |
11月2・3日 | うそ替え神事 |
11月3日 | 大庭燎祭(おかがらびまつり) |
11月23日 | 新嘗祭 |
12月8日 | 旧車祭 |
12月31日 | 大祓式 |
ここからは、特殊なお祭り・神事の概要を紹介しますが、もっと詳しい情報を知りたい方には、以下の関連記事がおすすめです。
特殊なお祭りと行事
万灯行列(9月25日に近い日曜日)
万灯行列(まんどうぎょうれつ)は獅子舞行列の先導する行列です。
万灯(紙で作った造花)を一人ずつ交代しながら担ぎます。各町会から参加し、約十二~十三基が谷保駅から谷保天満宮まで威勢よく練り歩きます。
古式獅子舞(9月25日に近い日曜日)
谷保天満宮で初めて古式獅子舞が舞われたのは天暦三年(949年)、村上天皇から下賜された獅子頭三基と天狗面を用いた古式獅子舞が行われます。
大庭燎祭(毎年11月3日、おかがらびまつり)
大庭燎祭(おかがらびまつり)は、養和元年(1181年)11月3日に天神島から現在の地に遷座した際、その残木を神前で焚き上げたことが起源となっています。
炎の高さを競い御神木の転倒を防ぎ合う、関東における奇祭の一つと言われています。おかがら火にあたると悪い病気にかからないと言い伝えられています。
うそ替え神事
うそ替え神事は、毎年11月2日・3日の両日に木彫りの「うそ鳥」をお頒かちし、「うそ鳥」を他の参拝者と交換し合うと、その年、心ならずも話したり言ったりしてしまった嘘や嫌なことを帳消しにし、「うそとして吉にとり(鳥)替える」とされています。
旧車祭
旧車祭は、谷保天満宮が明治時代に日本で初めて行われた自動車の遠乗会(ドライブツアー)の終着点であったこと、また、交通安全発祥の地である谷保天満宮にちなみ、境内にクラシックカー・アンティークカーが集結する祭典です。
クラシックカーに興味がある方はもちろん、自動車の歴史に興味がある方におすすめです。
谷保天満宮の御朱印やお守り
社務所では合格御守、厄除御守、交通安全御守、合格祈願絵馬、各種御朱印、切り絵御朱印、交通安全ステッカー・キーホルダー、交通安全絵馬などが授与されています。
大庭燎祭、うそ替え神事に因んだ御朱印
今回は切り絵御朱印と書置き御朱印を拝受いたしました。
この日の2024年11月3日は「大庭燎祭(おかがらびまつり)」と「うそ替え神事」が同時開催されていましたので「うそ替え神事御朱印」を授与いただきました。
旧車祭にちなんだ御朱印
2024年12月9日開催の「旧車祭」にて以下の御朱印を拝受いたしました。
谷保天満宮 アクセス情報
電話番号: 042-576-5123
アクセス:(電車で行かれる方)JR南武線 谷保駅 徒歩4分
(車で行かれる方)国立府中インターより約5分
谷保天満宮 駐車場
甲州街道立川方面の「谷保天満宮前」信号の左側に駐車場があります。
利用料無料、約30台の駐車スペースがありますが、お正月や例大祭などの行事の際は大変混雑するので公共交通機関のご利用をおすすめします。
谷保天満宮の周辺駐車場
谷保天満宮の周辺には時間貸し駐車場もあります。
駐車場名を押すとGoogleマップで場所を確認できます。
タイムズ谷保駅南口(収容台数5台、徒歩2分)
アイパーク 谷保駅前第1(収容台数11台、徒歩5分)
谷保天満宮 周辺観光スポット
谷保天満宮の付近には以下の見どころ観光スポットがあります。
くにたち郷土文化館、青柳稲荷神社、大國魂神社、高安寺、高幡不動尊金剛寺、武蔵国分寺・国分寺薬師堂など
谷保天満宮 紹介まとめ
谷保天満宮は約1100年の歴史があり、菅原道真公を祀る関東三大天神の一社として人気が高い古社です。
学業・学芸の神として崇められている道真公の威霊に肖り、学業成就・合格祈願・必勝祈願などのために多くの参詣者が訪れています。
摂社・末社や梅林など見どころが多く、菅原道真公にまつわる伝説や交通安全祈願発祥の地となった由縁など歴史ファンにとっても魅力が多く人気があります。
周辺には大國魂神社、高安寺、高幡不動尊金剛寺といった格式が高い神社仏閣も点在しており、ぜひ一度、谷保天満宮を訪れてその魅力を確かめてみてください。
天満宮と天神、天神信仰についての以下の記事もおすすめです。
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