京都市東山区にある安井金比羅宮(やすいこんぴらぐう)は、「悪縁を切り、良縁を結ぶ」という、悪縁で悩んでいる人のための救いの神社として知られています。特に、願いを込めてくぐる「縁切り縁結び碑」は強烈なパワーがあるとして、多くの参拝者が訪れます。
この神社は「縁結び」のイメージもありますが、まずは「縁切り」、それから「縁結び」というのが基本のスタイルです。新しい幸せのため、今断ち切りたい悪縁がある方に、特におすすめしたいパワースポットです。
安井金比羅宮の縁切り効果がやばい理由
安井金比羅宮が「縁切り」の神社としてこれほどまでに有名になった理由は、ただご利益があるというだけでなく、その参拝手法が非常にユニークで、単なる手法というよりは「厳かな儀式」だからです。
「縁切り縁結びの碑」が強力なパワースポット

縁切り縁結びの碑は京都屈指のパワースポット
最大の理由はもちろん、境内の中央に鎮座する「縁切り縁結び碑」という最強のパワースポット。 高さ1.5メートル、幅3メートルもある巨石には、無数の「形代(かたしろ)」と呼ばれる願い事が書かれたお札がびっしりと貼られており、その異様なまでの迫力が人々の目を引きます。
この碑の持つ力は、単なるお参りではなく、「くぐる」という身体的な行動を伴うことで、悪縁を断ち、良縁を結ぶという決意を強固にし、願いを神様に明確に伝える役割を果たしています。
その効果で「やばい」くらいに縁切りが叶い、新しい縁結び・良縁に恵まれたという噂が広まり縁切り縁結びのパワースポットとして「超人気」の神社となっています。
ご祭神・崇徳天皇の「断ち物」信仰が強力!

崇徳天皇は宮廷への怨霊とも言われている
安井金比羅宮の縁切り効果がやばい理由には、ご祭神の一柱である崇徳天皇(すとくてんのう)の存在も欠かせません。 崇徳天皇は、平安時代末期の保元の乱(ほうげんのらん)において権力闘争に敗れ、讃岐国(現在の香川県)へ流されるという悲劇的な運命を辿りました。流刑の地で、彼は俗世間とのあらゆる繋がりや煩悩を断ち切り、写経に専念。朝廷に納めようとした写本が拒否されたことで、強い怨念を抱いたとされる逸話もありますが、ひたすら仏教に帰依したとされています。この故事から、崇徳天皇は「断ち物の神様」として信仰されるようになり、それが転じて「縁切り」のご利益へと繋がったとされています。
この具体的で強力なご利益が口コミで広がり、「人間関係の悪縁を切る」「病気や悪い習慣(ギャンブル、飲酒など)との縁を切る」など、現代人の多様な悩みに応えるパワースポットとして、京都屈指の存在となりました。
安井金比羅宮のアクセスと基本情報
基本情報
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【電話番号】075-561-5127
【拝観時間】終日参拝可能(社務所は10:00〜16:00)
【拝観料】境内自由(無料)
【主祭神】
・崇徳天皇(すとくてんのう)
・大物主神(おおものぬしのかみ)
・源頼政(みなもとのよりまさ)
【ご利益】
・悪縁切り(人間関係・病気・依存など)
・良縁結び(恋愛・人間関係・仕事など)
・交通安全・海上安全
公共交通機関でのアクセス
【市バス】京都駅から市バス206系統「北大路バスターミナル行き」乗車 → 「東山安井」下車 → 徒歩約1分
【京阪電車】「祇園四条駅」から徒歩約10分
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【阪急電鉄】「河原町駅」から徒歩約15分
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車でのアクセス
- 名神高速 京都東IC → 五条通 → 東大路通経由 → 約20分
- 名神高速 京都南IC → 国道1号線 → 九条通 → 東大路通経由 → 約30分
駐車場情報
【収容台数】約5台(普通乗用車)
【営業時間】24時間営業
【通常料金】
・9:00〜24:00:30分ごとに300円
・0:00〜9:00:60分ごとに100円
【最大料金】
当日最大(0:00〜24:00):2,000円
【無料対応】
9:00〜17:30の間に社務所で駐車券を提示すると、30分無料になります。
安井金比羅宮の由緒・歴史
安井金比羅宮の歴史は、遠く飛鳥時代、藤原鎌足が建立した仏堂に始まりますが、この地を「縁切り」の聖地へと変えたのには、一人の天皇と、彼を深く愛した女性の悲しい物語が背景にあります。
崇徳天皇と阿波内侍の悲恋

阿波内侍:彼女の悲恋から生まれた縁切り縁結びの信仰
時は平安時代末期。崇徳天皇は、保元の乱(1156年)において権力闘争に敗れ、讃岐国(現在の香川県)へ流されるという悲運に見舞われます。天皇が都を追われた後、寵愛されていた阿波内侍(あわのないし)は、二度と会えない深い悲しみに暮れました。
内侍は、天皇の霊を慰め、また自らの愛する人との縁が無理やり断ち切られてしまった悲しみを昇華させるため、この地に社を建立したのが、安井金比羅宮の直接的な起源とされます。
悲願から救済への祈り
阿波内侍は、社に籠もり、生涯をかけてお参りを続けました。彼女の願いは、単なる悲しみからの解放ではありませんでした。
「自分と同じように、愛する人や大切な人との縁が、不本意な形で断ち切られてしまうような、 悲しい思いをする人がいなくなりますように」
内侍は、悪しき力や運命によって断ち切られた縁を清算し、人々が自らの意志で良縁を結べるようにと、深く祈り続けたのです。この崇高な悲願こそが、現在の「悪縁を切り、良縁を結ぶ」という信仰の根幹となりました。
「金比羅さん」との融合
その後、時代が下り江戸時代に入ると、この地に海上交通の守り神である金比羅権現(大物主神)が合祀され、「安井金比羅宮」として再興されます。
このようなことから、安井金比羅宮が単なる「縁切り神社」というイメージではなく、「悲しみや苦しみから人々を救い、幸せな繋がり(良縁)を願う」という、崇徳天皇と阿波内侍の温かい救済の想いに満ちた神社だと理解できれば、より一層意義深い参拝となるでしょう。
安井金比羅宮の参拝方法
安井金比羅宮の参拝は、「本殿参拝」と「縁切り縁結びの碑の儀式」の2つから成り立っています。この手順を間違えると、ご利益を十分に得られない可能性があるため注意が必要です。
「縁切り縁結び碑」の正しい参拝方法

願いを唱えつつ表から裏へ、裏から表へくぐれば
本殿への参拝を済ませたら「縁切り縁結びの碑」へ向かい、以下の順序で参拝しましょう。
1. まず本殿での参拝を済ませる
縁切り縁結びの碑に向かう前に、本殿にご参拝しましょう。ご祭神の崇徳天皇へご挨拶をし、日頃の感謝を伝えるとともに、これから行う願いの成就を祈念しましょう。
2.「形代(かたしろ)」に願い事を記入
本殿前にある授与所にて「形代」(身代わりのお札)を受け取ります(志納、目安100円程度)。形代の裏面に「断ち切りたい悪縁」と「結びたい良縁」などの具体的な願い事を記入します。抽象的ではなく、具体的であるほど、神様にも願いが伝わりやすくなります。
3. 形代を持って、表から裏へくぐる(縁切り行為)

表から裏へくぐると縁切りが叶う
願い事を書いた形代を持ったまま、願い事を念じながら、碑の表(おもて)側から裏(うら)側へと穴をくぐり抜けます。 この行動で、あなたにまとわりついた悪縁が断ち切られます。
4. 形代を持って、裏から表へくぐる(縁結び行為)

裏から表へくぐると良縁が訪れる
続いて、形代を持ったまま、同じ穴を裏側から表側へとくぐり抜けて戻ります。 この行動で、良縁が結ばれ、新しい幸せが訪れる道が開かれます。
5. 形代を碑に貼り付ける
最後に、手元の形代を、碑の好きな場所にしっかりと貼り付けて完了です。
穴をくぐる際は、和服やタイトな服装だと苦労する可能性があります。特に女性は、スカートよりも動きやすいパンツスタイルをおすすめします。また、行列ができる場合は、くぐる順番を守り、焦らずに願い事を強く念じることに集中しましょう。
ご祭神とご利益
安井金比羅宮には、以下の三柱が祀られています。これらのご祭神のおかげで、恋愛・良縁・縁結び、仕事、健康、学業など、「悪縁を断ち、良縁を結び直す」といった総合的なパワースポットとなっているのです。
- 崇徳天皇(すとくてんのう)
- 大物主神(おおものぬしのかみ)
- 源 頼政(みなもとのよりまさ)
崇徳天皇のご利益
- 主なご利益:悪縁切り、良縁結び、断ち物成就
- ご利益の背景:平安時代末期の保元の乱に敗れ、讃岐国へ流された後、俗世間とのあらゆる繋がりや煩悩を断ち切った故事から、「断ち物の神様」として信仰されています。
- こんな人におすすめ:
・依存症(飲酒、ギャンブルなど)からの脱却を願う人
・悪影響のある人間関係を清算したい人
・過去を断ち切り、心機一転を図りたい人
大物主神のご利益
- 主なご利益:海上交通守護、商売繁盛、金運
- ご利益の背景:「金比羅さん」として親しまれ、交通安全や金運のご利益が有名です。大漁追福のご利益も持ちます。
- こんな人におすすめ:
・運転や旅行、出張が多い人(交通安全)
・事業を成功させたい経営者や個人事業主
・金運を上げたい人
源頼政のご利益
- 主なご利益::勝運招福、武芸上達、困難克服
- ご利益の背景:弓の名手であり、困難を乗り越える強い意志と勝運をもたらします。彼の妻が縁切り縁結びを祈願したことも社に伝わります。
- こんな人におすすめ:
・受験やスポーツの試合など、勝負を控えている人
・仕事で大きなプロジェクトを成功させたい人
・逆境に立たされている人、強い意志を持って問題解決したい人
安井金比羅宮の見どころ
それぞれの見どころの特徴や注目ポイントなどを紹介します。
鳥居

石造りの柱が四角形が特徴の一の鳥居
正確な建立時期は不明ですが、現在の鳥居は近代以降に再建・整備されたものです。
その様式は「石造明神鳥居」で柱が四角形(角柱)である点が大きな特徴です。四角形の鳥居は「角鳥居」や「住吉鳥居」と呼ばれ比較的珍しい様式です。
美しい参道

美しい木々の緑と石灯籠が佇む安らぎの参道
本殿へとつながる参道の両側には、緑の葉を茂らす木々、石灯籠と赤い街頭が静かに佇んでおり、落ち着きと安らぎを感じさせる写真映えする参道だと思いました。
私の前方には仲睦まじい外国人観光客と思われるカップルが本殿に向かって歩いていました。
絵馬の道の碑

数え切れないほどの絵馬が奉納されている絵馬の道
「絵馬の道」とは、安井金比羅宮の信仰の中心である「悪縁を切り、良縁を結ぶ」ご利益を願う、「縁切り・縁結び碑」へと向かう道で、その途中には大きな石碑も鎮座しています。
道中には参拝者が奉納した無数の絵馬が掛けられており、絵馬の文字を眺めてみると、まるで「人間関係断捨離フェス」が開催されているような気分になります。
「夫とサヨナラできますように」「あの上司が遠くへ飛ばされますように」など、切りたい縁の願いがずらりと並び、ちょっとしたホラー映画の予告かと思ってしまうほどです。
とはいえ、そのすぐ隣には「理想の彼氏と出会えますように」「素敵な恋が始まりますように」といった、恋愛ドラマの第1話みたいな願いもたくさん見られます。
この神社はまさに「縁を切ってからの縁結び」という、人生のリニューアルプランを全力で応援してくれる場所のようです。
また、人間関係だけでなく、「アル中を克服できるように」 「タバコを止められるように」のような悪癖=悪運を断ち切る効果も期待できるようです。
手水舎

重厚な風格の手水舎は一枚岩で造られている
安井金比羅宮の手水舎は、自然の岩から「一枚岩」で造られており、風格がある重厚な佇まいを見せています。手水鉢の正面には、「明浄(めいじょう)」の二文字が力強く刻まれていますが、これは「清くけがれのない心」を意味し、「悪縁切り」の前に心身を清めるという安井金比羅宮の信仰の核心を示すものです。この「明浄」の文字は、さらに戦前の内閣総理大臣であった近衛文麿(1891-1945)の書であると伝えられており、文化的な価値も兼ね備えた手水舎です。
拝殿

この日、拝殿に到着するととにかく参拝者で賑わっていました。
安井金比羅宮の拝殿は、壁がない「吹放ち(ふきはなち)」構造が特徴です。これは、柱と屋根だけで構成される開放的な様式であり、神域(本殿)と参拝者(人間界)との物理的な隔たりを最小限にすることを目的としています。この開放的な空間は、多くの参拝者を収容するとともに、祭典や神事の様子を外から見やすくする機能も担っています。
ちなみに、左側に並んでいる人たちは「縁切り縁結び碑」に向かう行列で、ざっと50人くらいが並んでいました。
本殿

拝殿と本殿覆屋が一体化した構造が特徴
安井金比羅宮の社殿は、拝殿と本殿覆屋が連続した一体型の構造になっています。
拝殿は床のない開放的な造りで、画像のとおり手前から階段があり、主祭神・崇徳天皇を祀る本殿へと続きます。
外観は一体に見えますが、階段が神域との境界となっており、機能的には拝殿と本殿が明確に分かれています。
本殿と一体化されたたこの拝殿には御賽銭箱がないので、上述した吹放ち(ふきはなち)構造の拝殿の方で御賽銭を入れてから本殿にお参りする形となっています。
縁切り縁結び碑

夥しい数の御札が貼られている縁切り縁結び碑
安井金比羅宮の「縁切り縁結び碑」は、高さ約1.5メートル、幅約3メートルの巨大な石で、その中央には、人が這って通れるほどの円形の穴が開いています。願いを唱えつつ穴をくぐると所願成就すると信じられています。
この巨石は、参拝者の願いが書かれた無数の形代(かたしろ)」(身代わりのおふだ)で表面が見えないほどにびっしりと覆われており、その異様なまでの光景が強い印象を与えます。
ご利益は「悪縁を切り、良縁を結ぶ」というものであり、断ちたい縁は男女などの人間関係の縁に限らず、病気、悪癖(酒、タバコ、賭事など)といった、人生の妨げとなるあらゆる悪縁が対象です。そして、それらを断ち切った後に、新しい良縁を結ぶことができるとされています。
安井金比羅宮の御朱印

楷書よりも滑らかで、草書ほど崩れない「行書体」に近い書式
ごの御朱印をいただいたとき、感動しました。
右上に「奉拝」、中央に「安井金比羅宮」の文字と社印、左上には帆に金が記された宝船の朱印が示されています、初穂料は300円。
伝統的な「行書体」に近い書式で書かれていますが、筆の流れを活かしつつ、楷書体よりも柔らかく、草書体ほど崩さない中間的な書体で書かれています。流麗でありながら読みやすく芸術性が高い御朱印だと思います。
この記事のまとめ
安井金比羅宮は、ただの「縁切り神社」ではありません。
そこには、悲しみを祈りに変えた阿波内侍の想いと、俗世を断ち仏道に生きた崇徳天皇の魂が宿っています。
悪縁を断ち切ることで、良縁を迎える準備が整う、という流れこそが、この神社の本質です。
人間関係、習慣、運命…何かを手放したいとき、そして新しい幸せを迎えたいとき、安井金比羅宮はきっと力になってくれるでしょう。
願いを込めて「縁切り縁結び碑」をくぐる儀式が、人生の転機になるかもしれません。


