ショッピングやグルメで賑わう街、吉祥寺。その喧騒の中にありながら、一歩足を踏み入れると静寂に包まれる、特別な空間が存在します。それが、吉祥寺の街の歴史を見守り続けてきた総鎮守、武蔵野八幡宮です。
単なるパワースポットではなく、江戸時代の大火から人々が新天地を求めて移住し、「吉祥寺」という村を開いた歴史の証人でもあります。
本記事では、武蔵野八幡宮の由緒・歴史から、ご利益をもたらすご祭神、見どころなどを、しっかりと解説します。
基本情報
【住所】東京都武蔵野市吉祥寺東町1-1-23
【電話番号】042-222-5327
【参拝時間】24時間営業
【社務所営業】9:00~17:00
【祈祷受付時間】9:00~16:00
【ご祭神】誉田別尊(応神天皇)、比売大神、大帯比賣命(神功皇后)
【合祀社】三島神社、出雲神社、大鳥神社、厳島神社、稲荷神社、須賀神社、疱瘡神社
【ご利益】出世開運、厄除け、縁結び、安産祈願、商売繁盛など
【ウェブサイト】東京神社庁紹介サイト
アクセス・駐車場
電車でのアクセス
JR中央線・京王井の頭線 吉祥寺駅より徒歩約10分。
吉祥寺駅北口(中央口)を出て、五日市街道沿いを西へ進みます。
[Googleマップで確認]
自動車でのアクセス
五日市街道(都道7号線)の八幡宮前という交差点のすぐそばに神社の大鳥居が見えます。
高速道路利用の場合は以下と3通りがあります。
中央自動車道の「調布IC」を利用する場合
[調布ICからのルートはこちら]
中央自動車道/首都高速の「高井戸IC」を利用する場合
[高井戸ICからのルートはこちら]
関越・外環道方面から「大泉IC」を利用する場合
[大泉ICなどからのルートはこちら]
駐車場

徒歩1分のコインパーキングがおすすめ
武蔵野八幡宮直営の専用駐車場はありません、周辺の有料コインパークをご利用ください。
八幡宮の真ん前の「パルコパーキング24」がおすすめです。
【名称】パルコパーキング24
【住所】東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目10−18
[Googleマップで確認]
【収容台数】20台
【利用料金】
9:00~21:00 平日30分/250円、土日祝30分/300円
21:00~9:00 全日30分/100円
昼間最大 8時~24時 1800円(月~金限定)
夜間最大 0時~8時 800円(全日)
※例大祭などの行事の際は混雑するため、公共交通機関の利用が推奨されます。
吉祥寺の起源を語る「武蔵野八幡宮」の由緒と歴史
武蔵野八幡宮の由緒と歴史は、そのまま現在の「吉祥寺」という街の成り立ちと深く結びついています。
1200年以上の歴史、創建は平安時代
武蔵野八幡宮の創建は、今からおよそ1200年以上前の延暦8年(789年)に遡ると伝えられています。創建者は、平安時代の著名な武将である征夷大将軍、坂上田村麻呂です。田村麻呂が蝦夷征伐へ向かう道中、この地の付近で進軍が難航した際、八幡信仰の総本社である宇佐八幡大社(大分県)の御分霊を勧請し、武運長久を祈願したのが始まりとされています。
この頃の鎮座地は、現在の吉祥寺ではありませんでした。当初は江戸の小石川水道橋外(現在の文京区本郷付近)にあったとされ、ご祭神は弓矢の神、武神として信仰される誉田別尊(応神天皇)をはじめとする八幡三神が祀られていました。
江戸時代:明暦の大火と「吉祥寺村」の誕生
江戸時代に、この神社の歴史における最大の転機が起こりました、それは、明暦3年(1657年)の「明暦の大火(振袖火事)」です。この大火によって江戸の大部分が焼失しました。幕府は被災した小石川水道橋外の周辺町民に対し、復興の一環として、当時原野であった武蔵野の地への集団移住を命じました。
明暦の大火で焼失するまで小石川水道橋外には吉祥寺という寺が実在しました。故郷の寺院の名を惜しんだ住民たちは、移住先の新開地を「吉祥寺村」と名付けました。そして、故郷で崇敬していた八幡宮の御分霊を、新しく開拓したこの地へと迎え入れ、遷座(せんざ)させたのです。これにより、武蔵野八幡宮は寛文年間(1661年~1673年)以降、吉祥寺村の総鎮守として、地域の守り神として深く敬われるようになりました。
現在:街の歴史と文化の中心として
現代の武蔵野八幡宮は、繁華街・吉祥寺駅の近くにありながら、一歩足を踏み入れると静寂に包まれた荘厳な空間を保っています。これは、創建の歴史の古さと、「吉祥寺」という街そのものの開拓史を見守ってきた重みが背景にあるからです。
境内には、井の頭弁財天への道標であった石碑など、地域の歴史を物語る史跡が残されています。単なるパワースポットとしてだけでなく、度重なる災難を乗り越えて新たな地を開いた人々の精神的支柱であり、現在の吉祥寺の発展を見守り続ける「吉祥寺の名のルーツ」を伝える重要な存在となっています。
なんの神様でどんなご利益?
なんの神様が祀られいるか?八幡宮なので、全国の八幡神社で祀られる八幡三神を主祭神としています。
ご祭神(御三神)
- 応神天皇(誉田別尊)
第15代天皇である応神天皇(おうじんてんのう)=誉田別尊(ほんだわけのみこと)で、武神・弓矢の神です。
主なご利益: 出世開運、武運長久、厄除け、必勝祈願。 - 比売大神(ひめおおかみ)
宗像三女神などの女性の神様とされます。
主なご利益: 縁結び、夫婦和合、芸能上達。 - 大帯比賣命(おおたらしひめのみこと)
神功皇后(応神天皇の母)の別名です。
主なご利益: 安産祈願、子育て、国家安泰。
応神天皇(誉田別尊)の詳細は以下の記事をお読みください。

境内社(末社)とご利益

七社の末社が合祀されている
武蔵野八幡宮の境内には、七社の末社が合祀されている社(やしろ)があり、一度の参拝で多岐にわたるご利益が得られます。
七社合祀社のご祭神・ご利益
三島神社
ご祭神: 大山祇命(おおやまつみのみこと)
ご利益: 山の神様であり、山岳信仰、旅行安全。
出雲神社
ご祭神: 大国主命(おおくにぬしのみこと)
ご利益: 縁結び、福徳円満、商売繁盛。
大鳥神社
ご祭神: 日本武尊(やまとたけるのみこと)
ご利益: 開運招福、商売繁盛。毎年11月には酉の市(大酉祭)が開催されます。
厳島神社
ご祭神: 市寸島比売命(いちきしまひめのみこと)
ご利益: 財宝、芸能、学問。弁財天信仰と結びつく水の神様です。
稲荷神社
ご祭神: 宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)
ご利益: 五穀豊穣、商売繁盛、家内安全。
須賀神社
ご祭神: 須佐之男命(すさのおのみこと)
ご利益: 厄除け、災難除け、病気平癒。
疱瘡神社
ご祭神: 大物主命(おおものぬしのみこと)
ご利益: 病気平癒、悪病退散。
武蔵野八幡宮の見どころ

街の喧騒から隔離された静寂な境内
武蔵野八幡宮は、都会の喧騒と隔絶された静かな境内の中に、複数の見どころがあります。賑やかな吉祥寺の中にありながら、境内には樹齢の古いケヤキやクスノキの大木が立ち並び、街の音を遮断しています。その静寂さは、「吉祥寺のオアシス」とも呼ばれるほどです。
美しい社殿

重厚な造りの拝殿や本殿には、龍や獅子などの緻密な彫刻が施されています。正面の上に掛けられている扁額は黄金色の部分が多く、社名は、伝統的な隷書や行書の要素を取り入れた「力強い行書(または隷書系の書体)」です。

拝殿の正面上に掛けられている扁額
地域の歴史を語る「井の頭弁財天道標」

井之頭弁財天への参拝者が目印にした道標、
鳥居の脇に残る石碑には「神田御上水 井之頭辨財天」と刻まれてり、井之頭弁財天様へお参りする 人のために建てられた道標です。
この道標は天明5年(1785年)に建てられたものであり、吉祥寺の開拓(寛文年間 1661年頃)から約100年以上後の江戸時代後期に、吉祥寺がすでに多くの人が行き交う場所になっていたことを示しています。「神田御上水」とあるのは、井の頭池が江戸の重要な水道である神田上水の水源であったことを示し、武蔵野と江戸が水の繋がりで結ばれていた歴史を今に伝えています。
手水舎

やや小ぶりな手水舎、吐水口は龍神
シンプルでこじんまりとした手水舎です。吐水口は水の守り神である龍の彫刻で、多くの神社で見られる光景です。

吐水口は威厳に満ちた龍の彫刻
岩山から飛び出すような躍動感があふれており、神気を放つかのような口元からは、清らかな水を静かに注ぎ、手水舎の水を厳かに守ろうとする姿勢が表れています。
左のセンサーに手をかざすと龍の口から水が出る仕組みです。普段は水が出ていないため水盤には水が張られていません。
御朱印

書置きの御朱印
武蔵野八幡宮の御朱印は、書置きと直書き(御朱印帳に記帳いただく)があります。御朱印をいただくことは参拝の証ですので、先に参拝を済ませてから社務所でいただきましょう。
今回は御朱印帳を忘れてきたため書置きだけ拝受しました。
初穂料は書置き300円、直書き500円。
通常の御朱印のほか、祭典や季節に合わせて特別な御朱印が授与されることもありますが、現在、限定御朱印は企画されていないようです。
お守り

勝ち運、勝負運、縁結び、安産などのお守りが豊富
武蔵野八幡宮では、八幡三神のご利益を授かる、以下の種類のお守りが頒布されています。
安産お守り、病気平癒お守り、厄除け守護守り、交通安全守護守り、旅行安全御守、学業成就守り、受験合格守り、合格祈願守りなど豊富な種類が頒布されています。
特に以下の3種類のお守りは人気があります。
- 勝守(かちまもり)
応神天皇の武神としての力にあやかり、出世や受験、試合などの勝負運を高めます。 - えんむすび守り、安産守り
比売大神や神功皇后のご神徳により、良縁、安産や家庭の平和を願うお守りです。
社務所

御朱印・お守りの頒布、御祈祷の申し込みを受け付けています
社務所は、拝殿の左側に建っており、御朱印とお守りやお札類を頒布、御祈祷の申し込みを受け付けています。

窓口には常駐者がいないため、社務所の入り口のインターフォンで呼び出す必要があります。
祭典・年間行事
地域に根ざした神社として、年間を通じて複数の祭典や行事が執り行われ、特に秋には賑わいます。
例大祭(9月15日付近)
一年で最も重要な祭典。これに合わせて行われる「吉祥寺秋まつり」では、神輿が街を渡御し、吉祥寺全体が熱気に包まれます。
大酉祭(酉の市)
毎年11月の酉の日には、境内社の大鳥社で酉の市が行われます。開運招福、商売繁盛を願う熊手などが並び、多くの参拝者で賑わいます。
新年・初詣
吉祥寺の総鎮守として、正月三が日は多くの参拝者で賑わいます。
この記事のまとめ
武蔵野八幡宮は、単なる都心のパワースポットではなく、江戸の歴史と吉祥寺という街の起源そのものを象徴する、非常に奥深い神社です。
出世開運(誉田別尊)と縁結び・安産(比売大神・神功皇后)の両方の強力なご利益が一度に得られます。
境内には、七社をまとめて祀る合祀社があり、多岐にわたる願いをかけることができ、「夫婦欅」や「井の頭道標」などの見どころも魅力的です。
吉祥寺を訪れた際には、ぜひこの歴史と静寂の空間に足を運び、街のルーツを感じながら、ご祭神たちのご神徳をいただいてみてはいかがでしょうか。


